Recipe
大将のハモの湯引きは、ここが違う|皮は柔らかく、身の中心は生に残す仕上げの秘密
Ingredients
- ハモ550〜650g(活きの良いもの、目が小さいもの)
- 自家製梅干し塩分濃度17〜18%(シソ漬け)
- 玉酒適量
- 塩適量
- 竹串または金串2〜3本
- 冷水または氷水適量
「ハモの湯引き」とは
ハモの湯引きは、550〜650gの活きの良いハモを使い、串打ちで身を固定して皮は極力長く加熱してゼラチン質に仕上げ、身の中心は生のままに保つのが大将のこだわり。腹骨の甘皮を残す丁寧な骨切りと、自家製梅干しから作った梅肉を合わせることで、ハモの甘みを最大限に引き出した極上の一品になります。
「ハモの湯引き」を美味しく作るコツ
-
食材選定
- ハモは550〜650gのサイズで、活きが良く、目が小さい個体を選ぶ
- 小さすぎると脂が乗らず、大きすぎると骨が荒くなる
-
下準備
- 水洗いを丁寧に行い、骨切りの際に腹骨の周りの甘皮(ゼラチン質)を切り落とさないよう注意する
-
火加減・加熱
- 竹串と添え串で身が丸まらないよう固定し、皮の面を長時間お湯に当てて加熱する一方、身の面は極力火を入れずレア状態に保つ
-
冷却・仕上げ
- 加熱後すぐに冷水(氷水)に落として冷やし、ペーパーで水気を完全に拭き取る
-
梅肉の準備
- 塩分濃度17〜18%の自家製梅干しをシソと一緒に漬け込み、玉酒で塩分を抜いてから裏ごしし、ハモの甘みを引き立てる
「ハモの湯引き」の材料
6点※ 材料名をタップするとAmazonで関連商品を探せます
「ハモの湯引き」の作り方・手順
- 1
ハモの下準備と水洗い
活きの良いハモを丁寧に水洗いし、血や内臓の臭いをしっかり洗い流す。熟成中に内臓の臭みが身に回るのを防ぐため、この工程は極めて重要。
- 2
骨切りと甘皮の処理
ハモをおろし、骨切りを行う。腹骨の周りの甘皮(ゼラチン質が豊富)を切り落とさないよう、丁寧に骨を処理して甘皮を残す。
- 3
串打ちの実施
竹串または金串を用いてハモの身を串打ちし、さらに添え串をして身が丸まらないように固定する。これにより、お湯の中で皮の面を均一に加熱できる。
- 4
皮を柔らかく仕上げる加熱
お湯に入れたハモの皮の面を、長い時間お湯に当てる。皮がぬるっと溶けるようなゼラチン質になるまで加熱し、身の面には極力火を入れずレア状態に保つ。
- 5
冷却と水気の処理
加熱後、すぐに冷水または氷水に落とし、素早く引き上げる。ペーパーなどで水気を完全に拭き取り、余分な水分を除去する。
- 6
自家製梅肉の仕込み
塩分濃度17〜18%の自家製梅干し(シソ漬け)の種を抜き、玉酒に浸して塩分を調整する。その後、丁寧に裏ごしして、ハモに合う酸味と塩味がシャープに調和した梅肉を完成させる。
- 7
ハモの湯引き完成と盛付け
冷やして水気を取ったハモを皿に盛付け、準備した梅肉を添える。ハモの甘みと梅肉の爽やかさが調和した極上の一品が完成。
- 8
ハモのアラから出汁を取る
おろした後の骨、頭、尻尾に塩をして1時間置き、熱湯で霜降りして血や汚れを洗い流す。完璧に下処理されたアラをじっくり煮出し、牡丹ハモのお吸い物やハモダレの基となる極上の出汁を完成させる。
- 9
内臓の活用(肝、浮き袋、卵など)
ハモの腹から取れる肝、腎臓、浮き袋は生姜を効かせた時雨煮に。真子(卵)は薄い甘皮を除き、一粒一粒に薄く塩をして冷蔵庫で脱水させ、濃厚な甘みと旨味が凝縮された塩辛に仕立てる。
料理の科学
湯引きによりハモの皮のコラーゲンが加熱されて柔らかくなり、中心部を生に留めることで、独特の弾力とレアな食感が生み出されます。氷水での急速冷却は、余熱による過加熱を防ぎ身を引き締めて水分を保持する役割があります。また、淡白なハモのうま味に対し、梅干しの強い酸味と塩味が加わることで五味のバランスが整い、対比効果によってハモ本来の甘味とうま味がより引き立ちます。
「ハモの湯引き」の詳しい解説
※ 動画の内容をトピックごとに整理してまとめています。
大将のハモへのこだわりと京都の思い出
大将は関東で長年修業を積み、ハモ料理を何十年も手がけてきました。本場である京都にも何度も足を運び、様々なハモを食べて研究を重ねてきたそうです。先日、京都出身の常連客から「ハモの料理を頼む」と連絡があり、関東ではハモの評価が真っ二つに分かれる(美味しくないと言う人も多い)ため、少し不安もあったと言います。しかし、大将が独自のこだわりで仕上げたハモの湯引きを提供したところ、「何十年もハモを食べてきたが、こんなに美味いハモは初めてだ」と大絶賛され、大きな自信に繋がりました。大将のハモは、一般的なものとは仕上がりが全く異なり、ボソボソ感やスカスカ感が一切ないのが特徴です。
湯引きに適したハモのサイズと目利き
大将が湯引き(落とし)に使うハモは、550gから650gのサイズのものだけに限定しています。これより小さすぎると脂の乗りが悪く、大きすぎると骨が荒くなって口に当たってしまうため、この重量の範囲内がベストなのだそうです。また、鮮度も極めて重要で、活きの良いハモでなければ美味しい湯引きにはなりません。死後硬直や熟成が始まったハモを湯引きにすると、身がボソボソになってしまいます。さらに、目利きのコツとして「目がこじんまりと小さいハモ」を選ぶことを挙げています。同じサイズであっても、目が小さいハモの方が絶対に骨が細く、口当たりが優しく仕上がります。
水洗いと骨切りに対する大将の哲学
大将は、料理人にとって魚を綺麗におろすことや骨切りが上手なことは「当たり前」であると考えています。それよりも重要なのは、その前段階である水洗い(下処理)です。大将は以前、スズキの水洗い動画で正しい洗い方を詳しく解説しましたが、水洗いが不十分だと熟成中に内臓の臭いや血生臭さが身に回ってしまいます。また、ハモの骨切りをする際、多くの料理人は腹骨(腹ぽお)を包丁で欠いて(切り落として)しまいますが、大将はそれをしません。なぜなら、腹骨の周りにある甘皮はゼラチン質が豊富で非常に美味しい部分だからです。丁寧な骨切り技術があれば、甘皮を切り落とさずとも骨を感じさせずに美味しく仕上げることができます。
皮は柔らかく身はレアに仕上げる湯引きの技
大将のハモの湯引きは、皮を柔らかく仕上げ、身の中心は生(レア)に残すのが最大の秘密です。ハモを湯に入れると身が丸まって波打ってしまうため、大将は竹串や金串で串打ちをし、さらに添え串をして身が丸まらないように固定します。これにより、お湯の中で皮の面だけをしっかりと均一に加熱することができます。皮の面は、口に入れたときにぬるっと溶けるようなゼラチン質にするため、驚くほど長い時間お湯に当てて熱を入れます。一方で、身の面には極力火を入れず、半分生のようなレア状態に保ちます。皮に十分火が入ったら、すぐに冷水(氷水)に落として冷やし、素早く引き上げてペーパー等で水気を完全に拭き取ります。
ハモの美味しさを引き立てる自家製梅肉
ハモの湯引きに欠かせないのが梅肉です。市販の真っ赤な梅肉を使う店も多いですが、大将は塩分濃度17%〜18%で自ら漬けた自家製梅干しを使用します。シソと一緒に漬け込みますが、シソのアク抜きを徹底しているため、梅肉は鮮やかな赤色ではなく、落ち着いたクリーム色(茶色に近い色)に仕上がります。この梅干しの種を抜き、玉酒(または水)に浸けてちょうど良い塩梅まで塩分を抜いた後、丁寧に裏ごししてハモに合う極上の梅肉を作ります。ハモの美味しさを台無しにしないよう、酸味と塩味がすっきりと調和したシャープな味わいに仕上げており、ハモの甘みを最大限に引き出します。
捨てるところなし!ハモの内臓の活用法
大将は「食材を無駄にしない」という強い信念を持っており、ハモの内臓も余すことなく料理に活用します。ハモのお腹からは、肝(レバー)、腎臓(血合い)、浮き袋、そしてメスの場合は真子(卵)、オスの場合は白子が取れます。これらは丁寧に下処理を施し、肝や浮き袋は生姜を効かせた時雨煮(ほど煮)にして小鉢として提供します。また、ハモの真子は薄い甘皮(膜)を取り除いてから塩辛に仕立てます。この塩辛は、一粒一粒に薄く塩をして冷蔵庫で脱水させることで、ねっとりとした濃厚な甘みと旨味が凝縮された最高の珍味になります。白子の場合も同様に、塩で締めて脱水させ、季節の夏野菜とお浸しにして和えるなど、上品な一品料理に仕上げます。
ハモのアラから取る極上の旨味出汁
ハモをおろした後に残る骨、頭、尻尾などのアラも、大将にとっては極上の出汁を取るための貴重な食材です。まず、アラにしっかりと塩をして1時間ほど置き、余分な水分と臭みを引き出します。その後、熱湯をかける霜降り(湯通し)を行い、冷水に落として頭の周りの血やエラ、腎臓などの汚れを徹底的に洗い流します。この完璧に下処理されたアラをじっくりと煮出すことで、牡丹ハモのお吸い物に使う澄んだ極上のお出汁や、ハモ寿司に塗るハモダレのベースとなる濃厚な旨味出汁が完成します。ゴミ箱に捨てられがちなアラを活かすことこそが、ハモ料理全体の完成度を高める鍵となります。
大将に聞いてみた!について
大将に聞いてみた!
登録者 2.1万人 ・ 日本料理・和食
1958年福島県生まれ。中学卒業後に日本料理の世界へ入り、日本三大料亭の一つ『金田中』や懐石料理の名店『胡蝶』などで修行を積んだ。33歳で新宿歌舞伎町に割烹をオープンし、その後も蕎麦割烹・焼肉店・すっぽん料理屋など多業態の店舗を展開。調理師専門学校の特別講師や独立開業コンサルティングにも携わり、ミシュランの星シェフを含む数百人の弟子を育てた。現在はこの道50年の経験をもとに、日本料理の知識・技術・業界事情を発信するYouTubeチャンネル『大将に聞いてみた!』を運営している。
※YouTubeチャンネルに遷移します
※チャンネル登録者数は記事の作成時点の数字で、最新の数値とは乖離がある場合があります。