Recipe
形だけのてっさ(フグ刺し)が多すぎる|噛み切れないのは“技術不足”です(前編)
Ingredients
- 天然トラフグ(2キロ以上が目安)
「フグ刺し(てっさ)」とは
和食職人の大将が、見た目だけのフグ刺しではなく、噛み切れて甘みが出る本物のてっさの引き方を解説。身の繊維を断ち切る逆引き、テンパネによる身の分割、適切な薄さと長さが重要。さらに皮は厚みごとに異なる湯の温度で処理し、冷やして締めることで食べやすく仕上げる技術を紹介。
「フグ刺し(てっさ)」を美味しく作るコツ
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身の下準備
- フグの身をテンパネ(分割)することで、筋の本数を減らし、逆引きで繊維を断ち切りやすくする
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切り方・引き方
- 長めに薄く引き、逆引きすることで噛み切りやすく、甘みが出る食感に仕上がる
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熟成の見極め
- 獲りたてのフグは身が活かっており硬すぎるため、適切に熟成させた上で薄さを調整する必要がある
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皮の処理
- 白皮と黒皮、とうとうみなど部位ごとに異なる厚みがあるため、厚みに応じて別々に湯をかけ、冷やして締める
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皮のカット方向
- 湯を通した皮は丸まる性質があるため、丸まった方向に対して縦に刃を入れると食べやすくなる
「フグ刺し(てっさ)」の材料
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「フグ刺し(てっさ)」の作り方・手順
- 1
フグの身をテンパネ(分割)する
おろしたフグの身に走る筋目(繊維)を確認し、頭を向こう側、尾を手前側に置く。2キロ以上の大きなフグであれば、身を3枚ほどに分割することで、後の引きで残る筋の数を減らす。
- 2
熟成度を見極める
獲りたてのフグは身が硬すぎるため、一定期間寝かせて熟成させる必要がある。熟成の度合いによって、引く薄さを調整する。厚く切ると食べづらくなるため注意が必要。
- 3
逆引きで身を引く
柳刃包丁を使い、テンパネした身を長めに薄く引く。逆引きすることで、身に残る筋を断ち切り、噛み切りやすく、甘みが出やすい食感に仕上がる。
- 4
フグの皮を厚みごとに湯をかける
フグの皮は白皮(お腹側)と黒皮(背中側)があり、トゲを取った部分は薄く、トゲのない部分は厚いままのため、厚みが不均一。厚みごとに切り分けて、異なる湯の温度で別々に処理することでプロの仕上がりになる。
- 5
皮を冷やして締める
湯を通したフグの皮は麺器などに挟んで重石をし、冷蔵庫でしっかり冷やして締める。この作業により食べやすい食感に仕上がる。
- 6
皮をカットする
湯を通した皮は加熱により丸まる性質があるため、丸まった方向に対して縦に刃を入れることで、口の中で巻かずに食べやすくなる。
料理の科学
天然トラフグは、死後硬直後の熟成(酵素反応)によって自己消化が進み、たんぱく質が分解されてイノシン酸などのうま味成分が増加します。また、フグの身はコラーゲン繊維が緻密で非常に硬いため、高度な包丁技術で極薄に引くことで、強靭な弾力を心地よい歯ごたえへと変化させ、噛み切りやすくすると同時に、口の中でうま味を感じやすくしています。
「フグ刺し(てっさ)」の詳しい解説
※ 動画の内容をトピックごとに整理してまとめています。
フグ刺しの基本と「逆引き」の重要性
和食料理人歴50年の大将が、フグの刺身(てっさ)について語ります。フグの肉質は非常に繊維が立っており、ただ薄く切るだけではゴリゴリとした食感になってしまいます。大将は「身の繊維を断ち切ることができなければ、フグ刺しとして美味しく食べられない」と強調します。よくフグ刺しを箸で豪快にバサッとすくって食べるシーンがありますが、天然のトラフグはそんな食べ方では噛み切れません。薄く切ったものを2〜3枚、ネギを巻いてポン酢につけ、噛み締めることで初めて甘みが出るのが本来のフグの美味しさです。大将の店に来る常連客からも「大将の引いたフグは食べやすくて、噛んでいると甘みが出て美味しい」と絶賛されています。
フグの身を分割する「テンパネ」の技術
フグを美味しく引くための重要な技法が「テンパネ」です。テンパネとは、おろしたフグの身を分割することを指します。大将は発泡スチロールの模型を使い、まな板の上のフグに見立てて分かりやすく実演します。フグの身には斜めに筋目(繊維)が走っており、頭を向こう側、尾を手前側に置いて、この繊維を断ち切るように包丁を入れます。2キロ以上の大きなフグであれば、身を3枚ほどにテンパネ(分割)します。片身のまま大きく引いた方が作業はしやすいですが、それでは美味しいフグ刺しにはなりません。テンパネした身を時計の逆回りに配置し、筋目をすべて同じ方向に流した状態で、長い刃の柳刃包丁を使って引いていくのがプロの技術です。
職人の見極めが試される「熟成」の重要性
フグ刺しの美味しさを左右するのが、身の「熟成」の見極めです。獲りたての活きが良いフグは身が活かって(死後硬直前の弾力がある状態)おり、そのままでは硬すぎて食べられません。そのため、一定期間寝かせて熟成させる必要があります。大将はヒラメを例に挙げ、ヒラメなら活かっていても薄造りにすれば美味しく食べられますし、熟成後に厚い平造りにしても楽しめますが、フグは同じようにはいかないと説明します。以前、ショウサイフグを厚めに切って食べたところ、まるでガムを噛んでいるかのようにいつまでも口の中に残ってしまったというエピソードを紹介し、フグは熟成の度合いを見極めて適切な薄さに引かなければ、絶対に美味しくならないと語ります。
大将が実践するフグ刺しを引く3つの極意
大将が実際に天然のトラフグを引く調理動画を交えながら、てっさの引き方の極意を解説します。ポイントは「長めに引く」「薄く引く」、そして最も重要な「逆引きする」の3点です。身をテンパネして分割することで、引いたときに身に残る筋の数が減り、繊維 of 点が小さくなります。この状態で逆引きを行うことで、口に入れたときに噛み切りやすく、噛むほどに旨味と甘みが広がる極上のフグ刺しに仕上がります。大将は「親父、細かいこと言ってるなと思うかもしれないけれど、ぜひ一度このやり方を真立して食べてみてほしい。本当に美味しいフグになるから」と、長年の経験に裏打ちされた自信を覗かせます。
フグの皮を美味しく仕上げる「湯」のこだわり
フグ料理において、身と同じくらい重要なのが「皮の刺身」です。フグの皮を美味しく仕上げるためには、ただお湯に通すだけでなく、しっかりと火を入れて柔らかく「戻す」作業が不可欠です。フグの皮には白皮(お腹側)と黒皮(背中側)があり、表面のトゲを取り除きます。しかし、トゲを取った部分は皮が薄くなり、トゲのない部分は厚いまま残るため、1枚の皮の中でも厚みにバラつきが生じます。これらを同じ鍋で一度に湯(ゆ)にしてしまうと、火の通りが不均一になり、食感が台無しになってしまいます。大将は「食べ歩きをしていて、皮の処理が下手くそだなと思う店が多い」と指摘し、皮は厚みごとに切り分けて別々に湯をすることがプロのこだわりだと語ります。
皮の締め方と「とうとうみ」の扱い方
湯を通したフグの皮は、必ず麺器などに挟んで重石をし、冷蔵庫でしっかりと冷やして締めます。カットする際にも工夫が必要で、フグの皮は加熱すると丸まる性質があるため、丸まった方向に対して縦に刃を入れることで、口の中で巻かずに食べやすくなります。また、白皮と黒皮の内側にある「とうとうみ」という部位についても解説します。とうとうみには筋肉質の身がついているため、湯の仕方が他の皮とは異なります。生の身がついている分、湯の後に水に漬けっぱなしにすると傷みやすく、臭いが出やすいため注意が必要です。大将は、こうした細かな手仕事の積み重ねこそが、お客様に本当に美味しいフグを提供するための料理人の最低限の思いやりであると締めくくりました。
大将に聞いてみた!について
大将に聞いてみた!
登録者 2.1万人 ・ 日本料理・和食
1958年福島県生まれ。中学卒業後に日本料理の世界へ入り、日本三大料亭の一つ『金田中』や懐石料理の名店『胡蝶』などで修行を積んだ。33歳で新宿歌舞伎町に割烹をオープンし、その後も蕎麦割烹・焼肉店・すっぽん料理屋など多業態の店舗を展開。調理師専門学校の特別講師や独立開業コンサルティングにも携わり、ミシュランの星シェフを含む数百人の弟子を育てた。現在はこの道50年の経験をもとに、日本料理の知識・技術・業界事情を発信するYouTubeチャンネル『大将に聞いてみた!』を運営している。
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