せっかくの良い魚が台無しに?|最後の切り方で変わる刺身の味わい|大将が考える「おいしい一切れ」とは

PR


和食料理人歴50年の大将が、刺身を美味しく仕上げるための包丁技術について詳しく解説します。どんなに良い魚を仕入れても、最後の切り方次第で台無しになることを強調。魚の繊維(筋目)を意識した正しい包丁の入れ方、活魚と熟成魚の異なる切り方、一般的に行われている間違った引き方など、素材のポテンシャルを最大限に引き出すための技術を語ります。

  • 包丁技術
    • 魚の繊維(筋目)をしっかり意識して包丁を入れることが最重要
    • お客様が口に入れたときに風味や旨味が広がり、筋目が断ち切れている方向から包丁を入れる
  • 切る向き
    • 切りやすさを優先するのではなく、食べる人を思いやるプロ意識を持ち、お客様目線で最適な方向から包丁を入れる
    • 一般的な尻尾側から引く方法は誤りで、逆から切るのが正解
  • 活魚と熟成魚の違い
    • 活魚は繊維が立っているためコリコリとした食感が楽しめるが、硬すぎる場合は薄造りにする
    • 熟成魚は旨味が出て筋目が立つため、それを噛み締めることで旨味成分と香りが引き出される
  • 盛り付けと厚さ
    • 一番美味しい部分である肩(頭側)が綺麗に盛れるよう、筋目が多い尻尾側を最後に残すように切る
    • 飾り包丁や過剰な細かい包丁は素材の歯ごたえや食感を損なわせる
  • 繊維の断ち切り方
    • フグのテンパネやごぼうのささがきなど、繊維を断ち切ることで歯切れが良くなる
    • 細い方からではなく、太い方から包丁を入れて繊維に対して垂直に切る

PR

※ 動画の内容をトピックごとに整理してまとめています。

魚の熟成よりも大切な「正しい包丁の入れ方」

和食料理人歴50年の大将・和田透氏が、前回の「魚の熟成」に続き、今回は魚を美味しく食べるための「包丁の入れ方」について熱く語ります。大将は、活魚の良さや熟成による旨味の引き出し方も大切ですが、それ以上に「正しく包丁ができているか」が重要であると指摘します。この話をすると「細かすぎる」「どうでもいい」と言われがちですが、食べる側、特にお客様に美味しく食べてもらうためには、最後の切り方一つで味わいが劇的に変わるのです。どんなに良い魚を仕入れて完璧に熟成させても、最後の包丁の入れ方を間違えれば、その魚の良さを台無しにしてしまいます。大将自身も食べることが大好きな人間だからこそ、この「おいしい一切れ」を生み出すための包丁技術に強いこだわりを持っています。

食材の「繊維」を意識した包丁技術の重要性

大将が言う「正しい包丁」とは、食材の繊維(筋目)をしっかりと意識することです。どんな食材にも繊維が存在し、特に活魚の場合は繊維が立っているため、コリコリとした食感が楽しめます。また、天然ものの魚を熟成させると、旨味が出てくると同時に筋目が立ってきます。この筋目を噛み締めることで、旨味成分や魚特有の香りが引き出されるのです。そのため、包丁を入れる際には、裏表や左右の向きをどうするかが非常に重要になります。現代の若い板前さんたちの中には、この繊維の重要性を十分に理解していない人も見受けられると大将は指摘します。天然ものの魚が減少している貴重な時代だからこそ、素材のポテンシャルを最大限に引き出すための包丁技術が、昔以上に求められているのです。

切りやすさ優先はNG!お客様目線の切り方

多くの板前がやってしまいがちな失敗として、「自分が切りやすい方向から切る」という点があります。しかし大将は、切りやすさではなく「お客様が口に入れたときにどう感じるか」を最優先すべきだと主張します。お客様が口に入れた瞬間に、魚の風味や旨味が広がり、筋目がしっかりと断ち切れているような方向から包丁を入れることが、美味しい刺身握りを作るための基本です。これができていなければ、せっかく新鮮な魚を仕入れたり、時間をかけて熟成させたりした意味がすべて無くなってしまいます。現代は昔のように魚が大量に獲れる時代ではなく、一匹一匹を大切に締めて仕入れているため、料理人にはそれに見合うだけの高い技術と、食べる人を思いやるプロ意識が求められます。

尻尾から引くのは間違い?美味しい部分を残すコツ

刺身を引く際、手前が低くて引きやすいという理由から、尻尾側から包丁を入れる板前が多いですが、大将はこれを「絶対にダメ」と一蹴します。なぜなら、その引き方をしてしまうと、一番美味しい部分である肩(頭側)が最後に残ってしまい、お客様に綺麗に握れず、結果としてクズのような形でしか出せなくなってしまうからです。正しくは、筋目が多い尻尾側を最後に残すように包丁を入れなければなりません。つまり、一般的に行われている引き方とは「逆」から切るのが正解なのです。大将は、このような技術の差が仕上がりの美味しさを大きく左右すると語り、近いうちに実際の魚を使ってこの切り方の違いを実演し、聞き手の浅見さんに嘘隠しなく食べ比べてもらう約束を交わしました。

流行りの飾り包丁に対する大将のこだわり

最近の寿司業界などでは、ネタに細かく包丁を入れる飾り包丁蛇腹のカットが流行しています。見た目が華やかで、お客様の目の前のカウンターで格好よく包丁を入れるパフォーマンスは人気がありますが、大将はこれに対しても厳しい意見を持っています。素材の性質を本当に理解していれば、過剰に包丁を入れる必要はなく、むしろ「逆引き」をして最も美味しく感じられる適度な厚みがあるはずだと言います。細かい包丁を入れすぎると、魚本来の歯ごたえや食感が損なわれてしまいます。醤油の乗りを良くするためという理由もありますが、大将はイワシアジなどの光り物も含め、それぞれの魚に最も適した「食べて美味しいカットの仕方と厚み」が存在し、それを見極める技量こそが本物の料理人の技術であると語ります。

魚の状態(活魚と熟成)で異なる最適なカット

魚の状態が活魚(いかっている状態)なのか、それとも熟成された状態なのかによって、包丁の入れ方は全く異なります。例えば、活きているヒラメを五枚おろし(四分一)にして、1センチほどの厚さの平造りにカットしてしまうと、身が硬すぎてゴリゴリとした食感になり、美味しく食べることができません。だからこそ、活魚のヒラメは薄く切る薄造りにする必要があります。しかし、薄造りにしてお皿に花びらのように盛る菊花盛りにする際、単に魚の表面の模様を綺麗に見せるためだけに引くのは「0点」だと大将は言います。模様を美しく見せつつも、美味しく食べられる引き方があり、それを次回の動画で鯛(タイ)を使って実演解説することを予告しました。

フグの「テンパネ」と「ささがきごぼう」の繊維対策

動画の後半では、フグのテンパネ(切り分け)ささがきごぼうを例に、繊維を断ち切る具体的な方法が解説されます。フグをまな板に置く際、頭を向こう側、尾を手前側に置くと、斜めに筋目が走ります。この筋目を断ち切ることで、歯切れが良く甘みのある刺身になります。2キロ以上の大きなフグの場合は、身を3枚にテンパネし、時計の逆回りに回転させて筋目を向こう側に流し、手前から長い刃で筋目をカットするように引きます。また、ごぼうのささがきを作る際も同様です。ごぼうの繊維を断ち切って歯切れを良くするためには、細い方からではなく、太い方(葉っぱの付いている側)からピューラーや包丁を入れてカットするのが鉄則です。細い方から切ると繊維に沿ってしまい、筋っぽい仕上がりになってしまいます。

大将に聞いてみた!

大将に聞いてみた!

登録者 2.1万人 ・ 日本料理・和食

1958年福島県生まれ。中学卒業後に日本料理の世界へ入り、日本三大料亭の一つ『金田中』や懐石料理の名店『胡蝶』などで修行を積んだ。33歳で新宿歌舞伎町に割烹をオープンし、その後も蕎麦割烹・焼肉店・すっぽん料理屋など多業態の店舗を展開。調理師専門学校の特別講師や独立開業コンサルティングにも携わり、ミシュランの星シェフを含む数百人の弟子を育てた。現在はこの道50年の経験をもとに、日本料理の知識・技術・業界事情を発信するYouTubeチャンネル『大将に聞いてみた!』を運営している。

※YouTubeチャンネルに遷移します

※チャンネル登録者数は記事の作成時点の数字で、最新の数値とは乖離がある場合があります。